【2020年12月時評】ペルー情勢、MNNATSOPとMANTHOCの10の活動報告 ペルーのダニエルより。
ダニエル・サンガマ・パンドゥーロ
1988年ロレート県・イキトス生まれ。ソーシャルコミュニケーター。2004年から2006年までMNNATSOP全国代表。現在、MNNATSOP全国協力者代表。教育省の生徒協働教育プログラムメンバー。
パンデミックの不安
ペルーの2020年のクリスマスは、これまでの年とは異なり、商売、子ども、青少年、若者、大人全てがパンデミックの影響を被った。さらに、国の状況に関しては、次のように複雑な状態が続いている。
ペルー政府は、抗コロナウィルスのワクチンを未だに入手していない。商談の遅れに加えて近隣国(メキシコ、コロンビア、アルゼンチン、チリ)がワクチン到着と医療・警察関係者への摂取開始を報じたことが、ペルー国民を不安に駆り立てている。さらに、国民は、続く経済的困難に加え、リマとピウラで増加している新規感染者がICUのベッドを占有し始めている状況下での、コロナの再燃とワクチンの未入手を危惧している。年末、商業施設に買い物に行く大勢の人々が引き起こした密は、感染のクラスターを引き起こす原因であったため、国民それぞれがもっと予防対策を意識すべきである。
教育機会の格差
公立の初・中等教育は、12月22日に2020年のオンライン授業を終了した。しかし、20万人以上の生徒がこの形式の授業にアクセスできず、教員の介添えなしに1月・2月に補習を行なった上で、3月の第1週に評価を受けることになる。2020年の学年を繰り返すことはないとされているが、その学習証明を提出するか、または補習を受けることになっており、もし、これができない場合は、2021年に相当する学年の学習に加えて、前年の勉強もすることになる。問題は、デジタル環境の格差である。政府が約束したタブレットは、まだ予定の受領者全員に届いておらず、政府プログラムの自宅(オンライン)学習に多くの児童がアクセスできていない。戦略は良かったが、ペルーにおけるインターネット事情は、格差があり、アクセスが貧弱と言える。2020年は、50万人の生徒が中等教育を卒業したことから、政府は、この世代の高等教育進学者を増やすために15の地方において1万5千人の枠を拡大することにした。
労働者の闘いの勝利
また、12月は、地方や大農園で働く労働者たちの戦いと勝利の月となったと言える。(なぜならば、)日給39ソーレスで朝2時から午後5時まで労働搾取していた旧農業促進法を議会に失効させることになったからだ。イカや北部の農業労働者たちは、この数ヶ月間、声をあげ、自分たちの権利を守る新法作りに参加し、監視を続けていたが、議員たちは、地方や労働者の現実を一向に理解しなかった。そのため、労働者たちは、行政府と立法府が自分たちの要求を聞くまで抗議運動を繰り広げたのである。なお、この抗議運動では、2名の死者の他、攻防戦が行われた地域が居住区域の近くだったことから、多くの子どもたちが催涙ガスの被害を被る結果となった。
2021年4月の国政選挙に向けて
来年4月の選挙を控え、大統領候補者たちが議員候補および副大統領候補のリストを提出した。働く子ども運動にとって今回の選挙は、大きな励みとなっている。なぜならば、かつてナソップの代表だったナディア・モンタルバン・デ・カラバイジョがJUNTOS POR EL PERÚ党から議員に立候補することになったからだ。教師でもある彼女は、これからナソップの取組および良質の公立教育を可視化する長い選挙キャンペーンを控えている。
12月の働く子どもたち運動 10の活動報告
12月は、毎年12月9日に児童労働者の尊厳の日を祝うことからナッツ(働く子どもたち)の活動において重要な月と言える。ナソップおよびマントックが行なった活動は次の通り。
児童労働者の尊厳の日における座談会 ナソップ
ナソップのイカ、リマ、カハマルカ、アンダワイラス、ワンカベリカの各支部の代表がパネリストとして参加。それぞれの経験に基づいた労働における尊厳の意味を共有し、彼らの労働が家族を支援していることや多くの子どもたちが抱えている教育や健康、娯楽、栄養補給、尊厳を持って生活する場所に関する問題と無関係ではないことを明らかにした。終了時には宣言が述べられた。
児童労働者の尊厳の日 マントック
全国の働く子どもたちが慈しみと立ち向かう気持ちでこの日を祝った。
児童座談会「尊厳のための声」 ナソップおよび国境なきコミュニティ
ナソップとチリの国境なきコミュニティ(Colectivo Sin Fronteras)が移民の尊厳に関する様々なイベントを主催。座談会では、ペルーとチリの代表が参加し、世界に向けて移民児童も国籍の違いによって差別されるべきではなく、団結と兄弟愛が保持されるべきであると主張した。
協議:児童に関する国家アジェンダ(2021~2026)への提案
この協議において子どもたちは、2021年~2026年の児童に関する国家アジェンダに対して提案を行った。我々の代表として、フランチェスカ・キスぺとソフィア・ロランドが参加した。
全国学生協議会「エントレ・パレス」
ナソップは、約50に及ぶ団体が参加する青少年ネットワークに所属している。唯一労働に関する経験を有するナソップの代表者は、他の青少年団体にこの不平等な国における子どもたちによる労働の価値を知ってもらうために活動の経験を発表。多くの青少年が貧困や家族支援のために働いた経験を持つことから、労働者としてのアイデンティティーを共有することとなり、ナソップにとって重要な機会となった。
ウェビナー「今も命を生む川、ルリン」 マントック
ルリン渓谷・丘・湿地帯の保護の重要性に関して地域住民の関心を高める目的で開催。
働く子ども国際協議会「対応と良い対応」 ナソップ
このイベントは、PROMINNATSとIFEJANTの子どもたちによる主催の下、エクアドル、ベネズエラ、パラグアイ、ペルーの団体が参加。家族間で、仕事で、学校で、団体で良い対応を促進することの重要性を提起し、常に良い対応を心がけることで全ての暴力を抑制することができると言及した。
ウェビナー「教育機関における性教育」 マントック
教員が教育機関における適切な性教育に関する情報を入手し、子どもたちが性の権利、生殖の知識を得ることを目的として開催。家族や教員、青少年が一緒にイベントに参加することで、性教育に関する教育・法則、社会レベルでの計画や経験の知識を深めた。
ナソップの総括とクリスマスの祝い
代表者や協力者たちとこの一年を振り返り、2021年の目標を立てた。
- 2021年は、活動開始から25周年を迎える。我々が決して屈することなく立ち向かい続けるために支援してくださっている全ての人たちに感謝しつつ、お祝いをしたいと考えている。
- 運動の支部を減らすことのないように。
- 各支部や会員たちの記念日を祝う。
- 各支部の会員たちとコミュニケーションを取るための対策を進める。
- 高等教育機関や旧ナッツのメンバーと連絡を密にする。
- 尊厳ある労働や主要な役割を担う参加者となることに関するワークショップの推進。
- 農村地方とコンタクトを取り、アヤクチョ支部のチュシのケチュア文化組織の経験を学ぶ。
- ナッツや団体の経験を様々な機会で広報する。
- 困難に立ち向かい、注意を怠ることなく、より想像力を働かせる。
- ナッツのメンバーとして、自分たちを守るために模範となる。
- 他機関との仲介役となる機会に参加する。
- 本部や支部の活動資金を模索する。
全国レベルにおける総括およびクリスマス祝い マントック
マントックの各支部は、協力者とともに2020年の総括を行い、多くを学び、課題を残した2020年を振り返った。
クシ・プンクによるダニエルの見解の継続に感謝しています。ペルーの状況や働く子どもたちの運動、ナソップ、マントックの活動を知っていただく機会になっていると感じています。それでは、2021年の見解でまたお会いしましょう。
(ダニエル)