働く子どもたちの活動取材:マントック・イエルバテーロ 2017 (村井裕子)

リマ市内の貧困地区に位置する Manthoc Yerbateros 支部を訪問し、支部での活動と、働く子どもたちの取材を行った。

※【 Manthoc Yerbateros 支部の体制 】
大人:責任者1ジャネット、責任者2マリア、その他台所支援の女性たちのほか、
ドイツ人、 イタリア人ボランティア女性たちなど
所属する子供たち:70名以上

【 2017 年 7 月 20 日の活動内容 】 (子供たち参加人数:約 25 名)

▼ 9:40

お菓子作りアルファホーレスと呼ばれるキャラメルクリームをはさんだクッキー作り。生地から本格的に作る。お菓子作りには事前に選ばれた子どもたち7名が参加。3つのテーブルに分かれて作業する。責任者ジャネットは子どもらをてきぱきとグループ分けし 、エプロンや帽子を自分自身で身につけさせ、手を洗うように指示。

小麦粉やコーンスターチ、バターなどを計量。レシピは向かいの壁に貼り付けてある。メンバーの中には既にアルファホーレス作りの経験者もい る。デジタル量りの数値を子どもたちに読ませて、数字の読みができているか確認。(参加している子どもたちは5歳くらいから12歳くらいまで)子どもによって、レシピの文字を読むのにとても時間のかかる子もいれば、計算が素早い子もいて様々。

「Yema(卵の黄身)は黄色いほうだっけ?透明なほうだっけ?」という会話が聞こえてくる。計量した粉を、 腕まで白くなりながら皆ふるいにかける。「
 ふるいにかけて、塊をなくすんだよ」とジャネット。

ジャネットは非常に根気があり、一人ひとりを作業に参加させ、読みの苦手な子にあえてレシピを読ませたりしている。限られた時間の中で、しつこすぎず適度に全員と接しながら年齢もバラバラの子たちを要領よくまとめており、非常に経験豊富なのが分かる。 子どもたちもしょっちゅう彼女の名を呼んで慕っている。皆のお母さん兼リーダーのような存在だ。

読むのが苦手なファビアン(7 歳)は、卵を黄身と白身に器用に分けて、粉の山の中に入れた。ジョエル(12歳)は勢いよく割りすぎて、黄身と白身が混ざってしまった。ジャネットはもう1つ卵を持ってこさせて、やり直しをさせる。全ての材料を混ぜて、手でこねながら生地をまとめる。ボール状になった生地をビニール袋に入れて冷蔵庫へ。作業の後は、子どもたち自らが台ふきやほうきを使って、テーブル、椅子、床を全て掃除。時間が経つにつれてどんどん子どもたちが到着する。テーブルを端に寄せて椅子を円形に並べ集会の準備。

▼10:50 集会開始

20 分ほど踊りながら歌ったりして、2 人一組で相手の真似をする遊びなどを行う。

▼11:10 話し合い

施設内で皆が共有する玩具の取り扱いについて。 最近、玩具を壊したり、使った後に片づけず放ったままにすることで、部品の一部が無くなったりして問題になっている。
朝来たら、玩具が床にばらばらに散らばっていた、など。
このような行為に対する対策・ 処罰を導入するべきか?についての話し合い。

子どもたちが批判や文句を言いあう中で、マリア(大人の責任者2)が発言する。
マリア「自分が片づけをした後で、誰かが来て全部散らかしたら、どんな気持ちになる?」

子ども「嫌な気持になる」
マリア「なぜそういう気持ちになるのかな?」子どもに考えさせる。
マリア「自分が努力したのに、それを認めてもらえない、軽視されていると感じるからでしょう」「
 玩具はコラボラドーレス(世話係の大人たち)のものではない、あなたたち子どもたちのものでしょう。だったら、あなたたち自身が責任もって管理しないといけないよ」「
家で片づけや掃除ができるのなら、ここでも同じようにするべき」

さらに話し合いや意見交換を行った結果、挙手による多数決で以下を決定。

①玩具を散らかして片づけない、壊すなどの行為を行った子どもに対して、1週間玩具の利用を禁止する

②一人一人が玩具の取り扱いに責任を持つこと、壊さない・散らかさないことなどを約束する旨を紙に書いて貼り、注意喚起をする。

▼11:30 子ども代表者選出

ジャネット再登場 。これから行う代表者の選出について説明・指示をする。
「あなたたちの代表を選ぶのだから、各自が考えて選ぶこと。これは遊びじゃないんだよ。どの候補をなぜ選ぶのか、きちんと意見を持ちなさい。そして立って意見を大きくはっきり述べてごらん」

代表者への立候補者は5名。このうち3名を投票で選ぶ。

代表者はどうあるべきか、各候補者の主義主張。
1 ソレダー(女子) 「積極的に活動へ参加するべきである」
2 カテリーナ(女子)「人の模範となるのがリーダーとしてのあるべき姿」
3 アンドレイ(男子)「責任感があること、勉強もきちんと疎かにしないことが大事」

4 リチャード(男子)「掃除・整理整頓などをきちんとする」
5 アナイス(女子) 「リーダーだからといって命令したり高圧的にならないことが大事」

挙手による投票の結果、代表者として選ばれたのは、2 カテリーナ、3 アンドレイ、5 アナイス。各候補者に対する評価、カテリーナ:宿題を手伝ってくれる、 行事への参加経験豊富、頭が良い。アンドレイ:玩具等を大事にしている、宿題を見てくれる。アナイス:責任感が強い、活動経験が豊富、など。

選ばれなかった2名は、代表者3名の補助を務めるほか、広報や連絡役を担当する。

▼12:15

代表者選出が終わり、アナイスが今後の予定などを話す。子どもたちの集中力も切れはじめてざわざわと騒がしくなりはじめる。参観人数28名ほどに増える。

ジャネットが、再度、玩具について話をする
「 玩具のピストルは禁止です。ピストルは、人を殺すための武器。皆、町で暴力を見たことがあるでしょう? ピストルは暴力の象徴です。だから玩具のピストルは、ここでは禁止です」

さらに、無くなったり壊れてしまった玩具を購入するため、食べ物を作って売ることが提案される。何を作って売るのかについて、再び話し合い。色々な案が上がったが、最終的にイカのから揚げか、ピカロン(ペルー風のドーナツ)かで挙手による投票。再度集中力が切れで騒がしくなってきた。

奥の部屋から ManthocのTシャツを着た別の大人スタッフが登場。

彼女が手を挙げると皆が黙った。静かな口調で語り掛けた。「Manthocでは、誰かが話している時には黙ってその話を聞きましょう。自分が話をしたいときは、まず手を挙げること。そして発言するときには、怒鳴らずに話しましょう。ここはサッカースタジアムやバレーコートではありません。相手が話しているときには、聞きましょう」

▼12:40

多数決で、ピカロン(ドーナツ)の販売により資金を集めることで決定。古株の15歳くらいのメンバーが意見
「以前は、食べ物の販売はManthocの運営・活動資金集めの為に行っていた。今は、玩具を大事にしないために、売上金を玩具代に充てなければいけないのか。そもそも玩具を大切に扱うことこそが大切だと思う」

▼12:45 昼食開始

横の台所で朝からスタッフの女性3人が作っていた昼食が出される。 メニューは、ワンプレートにご飯、ひよこ豆の煮もの、野菜サラダを盛ったもの、果物を煮て作った手作りジュース、ぶどうのデザート。1階の広間。お菓子作りや集会をしていたのと同じ場所が食事のスペースでもある一方で、新旧代表メンバーは、別室で「Trabajo
 Digno」(尊厳ある労働)とは何か、について紙に書いてジャネットとマリアに提出。子どもによっては昼ご飯を食べながら作業している。各自、真剣な顔つきで紙に考えを書いている。尊厳ある労働とは……自分自身を、そして他人を尊重すること・ 自他の権利を尊重すること・正直であること、連帯の気持ちを大切にすること・汗を流し野外で働く努力、そのことを恥ずかしく思わないこと。

▼13:20

ほぼ全員昼食終了。各自がお皿を下げて洗い、解散。子どもによってはその後帰宅。お菓子作りの子どもたちは、後半の作業を開始。生地を伸ばして型をとり、オーブンで焼く。

(村井裕子)

 

<取材・撮影を通して所感>

子どもたち70人以上の大所帯だが、ジャネットのような熟練のスタッフを筆頭にボランティアとの連携もあり、まとまりがあると感じた。子どもたちは明るく、行儀のよい子が多いと思った。周辺は市場で道にはゴミや落書きが多く見られ、治安が悪く荒れているのが一目で分かる地域。Manthocに来なければ周辺の素行の悪い大人からの影響は非常に大きいと思う。Manthocの中は質素だが小ぎれいで明るく、子どもは皆挨拶ができ、食事のしかたもきちんとしていた。一番小さな 3歳以下くらいの子どもまでも(メンバーの子どもの中には、幼い弟や妹を連れてくる子たちもいる)食事の後、まずゴミ箱にいってブドウの殻や種を捨ててからお皿を台所に下げていたのに驚いた。

Infantに訪問したときにも感じたことだが、集会で一人ひとりに発言させることで、人前で臆することなく意見することができるようになり、自分の考えや主張を述べるのが(大人顔負けに)上手な子どもが多い。実際に、大人並みに働いている子どもたちが多いので、言葉に重みがあり、何と立派だと感心した一方で、3時から市場で働くジャイールなどは内気な子どもで、毎日そのような重労働をしなければならない子どもたちが不憫に思えた。

もちろん70人の子どもがいるのだから、大変なことも多いと思う。ドイツ人ボランティアの女性いわく、日によってはまとまりがつかず苦労する時もあるとのことだった。











(
 まとめ/森本佳奈子)

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