ペルーの働く子どもたち物語vol.12〜カハマルカの街角で〜 取材記(ウラ話)2019年7月

2019年7月上旬。一日中どんより曇り空が続くペルーの首都・リマを飛び出して、飛行機で北東へ1時間20分。今回の舞台カハマルカは、アンデスの山間部にあり、山の天気よろしく、雨が降っていたかと思えば晴れ間もあり、空気が澄んで空が近く感じるところだった。

出迎えてくれたのは、マントック・カハマルカのスタッフ・セリさん。責任者で姉のアデーラさんとここの活動と運営を切り盛りしている。

マントック・カハマルカの取り組みはユニークで、独自に活動資金を生み出すため、ホステルを運営している。食堂や会議室もあり、子どもたちの活動場所の拠点になるのはもちろん、Booking.comにも登録されていて、一般の観光客も泊まりに来る。

また、ドイツやベルギーなどから定期的に来ているボランティアの受け入れもしている。建物はカラフルで可愛らしく、庭の植物も手入れされていて心地よい雰囲気だった。

インカの皇帝が座っていたと伝えられる丘の上から眺めたカハマルカの景色は、緑の山々と褐色の家々が温かなコントラストを生み出していた。郊外には温泉や遺跡などがあり、ほどよく観光客も訪れる穏やかな街並みに見える。

街にはタクシーやバイクタクシー、乗合マイクロバスがたくさん走っている。近場では1ソル(約32円)で乗れるものもあるので、人々はよく利用する。

そんな中、歩くのが大好きといいながら、軽快にリズムを刻み歩を進める青年がいた。イサイアス、19歳。詳しくは映像をご覧いただくことにするが、彼はラジオを持ち歩き、小柄な体で、熱のこもったラップを歌う。

Hay señores que a los demás se creen superiores
Hay vidas que se marchitan como las flores

自惚れた偉そうにしている紳士もいる
花のように枯れる命もある

El peru no va a cambiar porque lo quieres asi,
quieres que el peru cambie empieza por ti, 

願っていてもペルーは変わらない
ぺルーが変わってほしいなら、あなたが行動を起こすんだ

イサイアスは、自分が見たカハマルカやリマの現実は、何が問題なのか、どうすれば変えていけるのか考え、歌詞にしてラップを通して叫んでいる。

カハマルカでは、道端で女性や子どもたちが葉物野菜やジャガイモを売っているのをよく目にする。

映像の中のリスの家のように貸し駐車場や、ダニエル一家の穀物製粉業など、知恵を絞って仕事をつくっている人たちも多い。しかし、稼ぎは少なく、子どもたちも働きに出ることが常だ。

中には、勉強なんかせずに働きなさい、という家庭もあり、小学校入学が遅れる子も多く、一般の公立学校では受け入れてもらえないケースもある。

マントック・カハマルカは小学校を運営していて、どの年齢でも1年生から勉強できるようにしている。想定以上の子どもたちが登校することになり、給食などの工面が大変なようだ。

写真は、学校が休みの日曜に地域の子どもたち向けの特別教室の様子だが、異年齢で助け合いながら学び遊ぶ姿は、子どもたちの社会性を高めていると感じた。テーマも、自分たちが暮らすカハマルカはどこかということから、LGBTまで幅広い。

今回の取材を通して、子どもたちのたくましさを感じた。確かに経済的には貧しいことは否めないが、それを言い訳にせず、現実を見つめながら、自分の可能性を広げながら、生きていこうという子どもたちがいた。

リスは産科医を、ダニエルは情報発信に関わる仕事を、イサイアスは心理学を勉強しながらラップを通して訴える方法を、模索しながら今を生きている。


おまけ。

取材3日目の午後、街から一斉に人が消えた。店はしまり、道端の行商人は消え、タクシーも走っていない。その日は、サッカーのアメリカ大陸カップの最終日で、ペルー対王者ブラジルだったのだ。皆家でテレビやラジオにかじりつき応援していたようだ。サッカーはペルーの人たちにとって、とても大切なスポーツであることを思い知らされた。

¡Arriba Perú!

(村田千紘)

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